みどりの石拾いブログ

Yahoo!ブログ終了のため、引っ越してきました。東京に住むサラリーウーマンが、試行錯誤で糸魚川周辺(新潟県・富山県)のヒスイを探した成果についてや、その他の趣味など、備忘録がてら語るブログです。

舞台『スルース〜探偵〜』観てきました

今回は、ミュージカルでなくてストレートプレイ。
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この戯曲、はじめて観たのは1989年の劇団四季版で、その時は日下武史山口祐一郎でした。
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それから年月がたち、2016年には西岡徳馬音尾琢真で観ました。その時は、西岡徳馬新納慎也バージョンもありましたが、TEAM NACSの音尾さんの方でチケットとりました。
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そして、今回は、吉田鋼太郎柿澤勇人
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吉田鋼太郎は誰もが知る俳優でしょうが、柿澤勇人(ファンの間では通称カッキー)は、そこまで有名ではないと思います。
かく言う私も今回がはじめてでした。

劇団四季で、“デス・ノート”のミュージカル版で夜神月を演じた等の経歴だそう。

ストーリーは、有名推理小説作家の〈アンドリュー・ワイク(吉田鋼太郎)〉が、自分の妻〈マーガレット〉を寝取った若い男〈マイロ・ティンドル(柿澤勇人)〉を自宅に呼び、マイロが訪れるところから始まる。
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はじめは、マーガレットの夫に呼ばれたのだから、何を言われるのだろう、と不安なマイロだが、終始フレンドリーに話しかけて来て、少し打ち解けてきたところで、なんと、アンドリュー所有の高額な宝石を盗まないか?と持ちかけられる。

妻には嫌気がしているので、キミと出ていってくれるのは大歓迎だが、今まで贅沢をさせてきたマーガレットを、一文無しのキミは満足させられるのか?
出ていったあと、出戻りされるのは困るんだよ。
うちには税金対策で買った高額な宝石があり、それに保険をかけてあるから、キミはそれを盗んで売って現金を手に入れ、マーガレットと暮らすがいい。
私には保険金が入るので、私の愛人の〈テア〉と仲良く暮らすから、と。
マイロは、いろいろ考えた末に、アンドリューと手を組むことにするが・・・
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私がこの脚本を観るのは3度目なので、もちろんストーリーは承知の上だったけれど、やはり面白い‼️

いや、むしろ、今まで観た中でいちばん良かったと感じた。

10代の頃(はるか昔😅)に観た日下武史山口祐一郎の時は昔すぎてぼんやりした記憶なのでともかく。
申しわけないが、4年前の西岡さんの時より、今回の吉田鋼太郎の演技が『いい』のだ。
どこかのレビューに、吉田鋼太郎吉田鋼太郎にしか見えない、とあったが、その『吉田鋼太郎』が、現代に蘇ったアンドリューそのものに見えた。(ちなみにこの作品は、1970年初演で、ほぼ半世紀前の脚本です。)

今回は、演出も吉田鋼太郎自身が手掛けているのだが、小説を書くのに使っているのはタイプライターでなくパソコンで、家はスマートホーム(スマホで音楽や照明などの家電を操作できる家)にしていて、現代的よりやや進んでいる感さえある。

私は今回の公演があまりにハマり、全部で3回観に行ったのだが(余談だが、これはコロナ禍のおかげと言える。こんなに面白い舞台は、一度観てから再度チケットを探しても、立見か当日券に並ぶか、それでも無理な場合があるが、公演期間のはやいうちに行ったおかげもあり、けっこうとれた。)一回目はアフターステージトークがあり、そこで柿澤勇人自身が語っていたように、まるで『あてがき(役者が決まってから、その役者のために脚本を書く)』かのように、ぼくらにあっている設定でした、と。

お金持ちで世間的にも有名人(著名人)で、成功者といえるアンドリューは吉田鋼太郎の役者としての人生とかぶるし、一方で柿澤勇人はミュージカル界では主演もそこそこやっているが、そこまで誰もが知っているというわけでもなく、以前共演した高畑充希などが押しも押されぬ有名女優になっているのが羨ましい、と本人も言っていたくらいで、小さな旅行代理店を経営しているがなんとかしてのし上がろうともがいているマイロと似てなくもない。
そういう対照的な立場があるかと思えば、二人の男はどちらも現実をあまり直視しない夢想家という共通点もある。

片や推理小説の中にしかないようなゲームを現実世界で興じる初老の男、片や愛さえあれば貧乏も乗り越えられて幸せになれる、と夢想する若者。


そして、台詞が現代に通じる事がちりばめられている。例えば
『その人間の本質を見たければ、そいつに“恥をかかせる”事だよ』とか、
マイロが『マーガレットが贅沢を覚えたのは、誰の罪ですか!』と言えば、アンドリューは『金があれば罪ではないのだよ』という台詞など、半世紀前の脚本が、現代にもしっかり通じて色褪せないのだ。

そして、やられっぱなしのマイロかと思えば、どんでん返しに次ぐどんでん返し。
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兎にも角にも、休憩20分を挟んで、1幕も2幕も1時間ずつだが、息をつく間もないテンションのまま全力疾走で走り抜けるように結末を迎える。

肝心かなめのネタバレをしないのは、ぜひ、ぜひとも再演があれば、観に行って欲しいから。

本当に面白い舞台というのは、この時間と空間を共有できることの幸せに出会える事を感謝せずにいられない、そんな舞台だと私は思います。(映画やTVはいつ観ても同じなので。)

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